外反母趾とは

原因・病態・症状

 母趾のMP関節(爪から2つ目の関節)で外側に“く”の字状に曲がって、屈曲部が内側に突出してしまう状態です(図1)。フットアーチ(図2)のバランスが崩れて開張足となり第5趾の内反を伴ってきます。

(図1)外反母趾_01
(図2)縦アーチ(左)と横アーチ(右)

 女性の方が、ハイヒールの靴を愛用することが原因になる、とよく言われますが、もちろんそれだけではありません。先天な素因、特にエジプト型の足と呼ばれる、母趾が第2趾より長いことなどが原因となります。

 私は歩行の際、つま先から接地して、靴の前足部に足の形が誘導されていくことが、最も大きな原因と考えていて、進行や再発予防のため、踵から接地することを指導しています。また、つま先に余裕があり、足が中で前後に動かない靴を選ぶよう、足を固定するために必要であればアーチサポートの足底板を勧めています。ひも靴であれば、ひもをしっかり目に結べば、足が固定されやすくなります。

 外反母趾は、自然経過で治癒に向かうことは稀で、次第に重症化し、突出部の痛みや胼胝で悩まされ、靴が合わなくなって不便な思いをします。また母趾の屈曲、伸展が不自由で、運動が困難になることが苦痛です。

治療

 おおむね、外反角が30度以下で症状も軽ければ、対症療法や進行予防などを行い、経過観察します。母趾のじゃんけん運動(図3)やタオルギャザー運動、装具療法(図4)などです。ただ近年は装具療法の限界を感じあまり勧めていません。

(図3)

外反母趾_03

静止時(左)と開いたとき(右:パーの時)

(図4)

外反母趾_04

外反母趾用装具

 おおむね、外反角が30度以上になると、保存治療はもはやあまり有効ではありません。症状が強く、患者さんと良く吟味の上、希望されれば手術へと進みます。他に根治療法はないが、手術なら根治できます(図5)。ただMP関節の変性性変化があると、痛みや拘縮が残ることがあります。
(図5)外反母趾_05_1-2手術前(左)と手術後(右)。

 私は、ミッチェル変法ないしハモンド変法を行います(図6,7)。前日入院、腰椎麻酔(当日のみ臥床となります。)で一時間ほどの手術です。中足骨で骨切りを行い、長さも調節(多くはエジプト型足なので幾分短縮します。)しながら向きを矯正し、骨切り部をワイヤーで固定します。母趾内転筋の切離や、母趾外転筋の移行を検討します。中足骨頭部の種子骨を、正しい位置に戻して縫合します。術後は念のため、3週間ほど短いソックス型のギプスを装着しますが、術翌日から歩行訓練などの理学療法を行います。1ヵ月半ほどで骨癒合します。骨癒合が得られなかった症例はありません。2~3か月で普通に靴が履けます。入院期間は相談して決めればよいのですが、最短なら抜糸まで10日間、或いはギプス固定期間の3週間などが目安となります。

(図6)外反母趾_06手術前(左)と手術後(右)
(図7)手術前(左)と手術後(右)

 

 最近では、原則として固定ワイヤーは経皮的の一本のみとし、ワイヤーの先端は皮膚の外に出ているので、抜く時(術後3週間目)の患者さんの負担はほぼありません。こうすることによるデメリットはなく、むしろ術後成績は良くなっています。

この手術は、人工関節手術などと異なり、何も人工物を体内に残さない、優秀な手術です。罹患以前の状態に戻るという意味で、本来的な根治術といえるでしょう。変形が治るので、靴が履きやすくなり、しっかりリハビリしてMP関節の動きがよくなれば、運動も自由に行えるようになります。

手術の様子

近年手術が増えており、手術を行える有床診療所として二人の臨床経験豊富な医師が在籍しております。また、患者様においても当医院を手術実績や経過も良好な診療所としてご満足いただいております。
真田理事長による手術の様子。